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音楽が好きな私ですが、ライブに行った経験はたくさんだとは言えません。

その数少ないライブの中で今でもまぶたに浮かぶライブがあります。
もう十年前どころではないのですが、心に刻まれているのです。学生時代のことでした。

きっかけは覚えていないのですが、このような組み合わせになりました。

私と当時の彼女、友人と彼の彼女、それに同じ科の先輩の五人で出かけたのです。

市内にあるライブハウスの中でも、小さなライブハウスでした。
収容人数も少ないところだったのですが、そのライブハウスは市内では魅力のあるライブが開催されることで名が知れていました。
待ち合わせの場所に面々集いました。

私たちのうち4人はいつものラフな格好でしたが、先輩はネクタイを締めてやってきました。
何せ彼は礼儀正しく、律儀なことで、わたしたち美術科の中では異色な存在と言えました。
その先輩は剣道の有段者であり、現役選手として大きな大会などにも出場していました。

私たちが楽しみにしていたその日の出演バンドは、ブルースもやるし結構ハードなナンバーもやるタイプのバンドでした。
4人のバンドメンバーが両手を上げて登場しました。大音量でライブが始まりました。次第にライブは白熱してきました。
ボーカルはジャンプしてテーブルの上に上がり、ボルテージも上がってきました。ライブハウスの中が熱を帯びてきました。その時でした、
ボーカルが足を滑らせて机の上から床に転落したのです。幸いけがもなく、再びテーブルに飛びあがりました。

誰かが大きな声で、「頑張るんだー」と叫びました。
ボーカルはその響きを聴いてげらげらと笑いだしました。

叫んだのはそれまで淡々としてお酒を飲んでいた剣道有段者の先輩だったのです。
せきを切ったかのように、先輩はシャウトし始めました。喜びの声、喜びの雄たけび、もう全く別人でした。
体を動かしバンドに声援を送る声が響いていました。

ライブは大いに盛り上がって終了しました。
私を含め他の4人はネクタイ姿の先輩の興奮ぶりに唖然としてしまいました。
いつもピンと背筋を伸ばして律儀正しい先輩の予想もしなかった行動にハラハラもしましたが楽しかったのです。
その先輩もいつまでも饒舌に、ライブのことを話しつづけました。人は外見では判断してはいけないと思ったのでした。

ライブはやはりいいものですね。
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