わりに最近のことです。
市役所にミニコンサートなどができるステージが新しく作られました。
たまたまそこを通ったのですが、ステージに女性たちが十人ほど立っていました。
どうやら、ちょうどコンサートが始まるところだった様子で、女性達が慌しく準備を行っていました。
時折リハーサルもしていていて歌声が聴こえてきたのですが、いろいろなジャンルの合唱は魅力的なものですね。
アマチュアとして楽しんでいる様子が伝わって来て、気持ちの良いものでした。
四季の歌を構成していたようでした。
サークルのメンバーたちの声が柔らかくエントランスホールにこだましていました。
突然、ある曲のイントロが流れ始めました。
メロディーがストリングス系の音で伝わって来て歌声が重なり始め、懐かしい歌声が流れ始めました。
それが「朧月夜」でした。
どうしたわけが景色が心の中に広がり始め、私の少年時代のふるさとの風景が心の中に広がってきて暖かな気持ちに包まれました。
肌に感じた風や草の香りまでが蘇って来るようで胸が詰まりそうになりました。
予想もしない出来事でした。私は59才です。
フォークジャンボリーを中学時代に知り、日本のフォークソングの草分けたちの音に親しみました。
高校になってからはレッドツェッペリンを始めとするブリティッシュロックに魅せられ、
ユーミンの「ベルベットイースター」に驚いた、そんな世代です。
バブリック・イメージ・リミテッドや、ブライアン・イーノに惹かれ、パティ・スミスには恋するほどの思いを持ちました。
こんな私ですが、この日の「朧月夜」は私を圧倒しました。「童謡」では済まされないものを感じたのです。
最近私の心の中に横たわっていたレッドデータブックのことが呼び起されたのかも知れません。
市街地で生活してきた反動なのかもしれません。
少年時代に毎日走り回った裏のを記憶が蘇って来たのかも知れません。
この歌を聴きながらそれらの風景を思い出したのです。
当時、陽が落ちた後の肌に触れる涼しい湿った風は、田んぼから吹いていました。う
るさいほどのコオロギたちが鳴いていました。「
朧月夜」を聴きながら私はこのような記憶の中にいました。
そういうことを予想もしていませんでした。思いがけない心の昂ぶりでした。
この歌は短い歌だったかもしれません。でもとても美しかったのです。
私自身に立ち戻らせてくれるような思いがしました。
音楽は人と人との垣根を取り払うと言った人がいました。
もしかしたら音楽は私たちと自然とのつながりの中にさえ、いざなってくれるものなのかもしれないと思ったのです。
この「朧月夜」のように長い間歌い続けられてきた歌には大きな意味と価値が備わっているのだと思ったのでした。
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